「野球観戦中に『DH』という言葉を聞いたけど、どういう意味?」「セ・リーグとパ・リーグで何が違うの?」と疑問に思ったことはありませんか。
DH(指名打者)制度は、投手に代わって打席に立つ打撃専門の選手を起用できるルールです。試合の攻撃力向上・投手の負担軽減・選手起用の幅拡大など多くのメリットをもたらす一方、戦略面での変化も生み出します。
- DH(指名打者)の定義と導入の歴史
- 試合開始前の宣言・解除など具体的なルール
- 投手起用の駆け引きへの影響とメリット・デメリット
この記事では、DHの基本概念から具体的なルール・試合への影響まで、野球初心者でもわかりやすく解説します。
DH制の基本と歴史

DH制を正しく理解するには、まずその定義と導入の背景を知ることが大切です。
DHとは
DHとはDesignated Hitter(デジグネイテッド・ヒッター)の略で、投手の代わりに打席に立つ打撃専門の選手のことです。日本語では「指名打者(しめいだしゃ)」と呼ばれます。
Designated Hitterの略で、投手の代わりに打席に立つ打撃専門選手
野球の打順は通常9人で構成されますが、DH制を採用したリーグでは投手の打順にDHを配置します。DHは投手の代わりに打席に立ち、攻撃面での役割を担います。
DHは守備に就く必要がないため、打撃能力に特化した選手を起用できます。現役を続けながら守備負担を減らしてチームの攻撃力を維持したいベテラン選手の起用にも活用されています。
守備には就かず打撃のみ担当
DHの最大の特徴は守備を一切行わず、打撃のみに集中できる点です。試合中はベンチで待機し、自分の打順が回ってきたときだけグラウンドに出て打席に立ちます。
| 役割 | DH(指名打者) | 通常の野手 |
|---|---|---|
| 打撃 | ○(投手の代わりに担当) | ○(担当) |
| 守備 | ×(不可) | ○(担当) |
| 投球 | ×(不可) | ×(投手以外は不可) |
導入の歴史
DH制は野球の歴史の中で段階的に導入されてきた制度です。
1973年 MLBアメリカンリーグで初採用
DH制が世界で初めて公式ルールとして採用されたのは1973年のMLB(メジャーリーグベースボール)アメリカンリーグです。試合の攻撃力向上と観客動員増加を目的として導入されました。導入後、アメリカンリーグの試合は得点が増加し、試合の見ごたえが向上したとされています。
一方、ナショナルリーグは長年DH制を採用せず「投手が打席に立つ伝統」を守り続けましたが、2022年からMLB全体でDH制が統一採用されました。
1975年 日本パ・リーグで採用
日本プロ野球(NPB)では1975年にパシフィック・リーグ(パ・リーグ)がDH制を採用しました。MLBアメリカンリーグの導入から2年後のことです。パ・リーグでのDH制導入により、打撃専門の強打者を長く活用できるようになり、試合の攻撃力が向上しました。
日本のセ・リーグでも2027年から導入予定
セントラル・リーグ(セ・リーグ)は長年DH制を採用せず、投手も打席に立つスタイルを維持してきました。しかし2027年シーズンからセ・リーグにもDH制が導入される予定とされています。
※2027年のセ・リーグDH制導入については、執筆時点(2025年8月)での報道・発表に基づいています。最新の情報はNPB公式サイトおよび各球団の公式発表をご確認ください。
DH制の歴史についてはベースボールインフォメーションのDH制解説でも詳しく確認できます。
DH制のルール
DH制には試合中の運用に関する細かいルールがあります。観戦や実際のプレーでは特に重要なポイントを押さえておきましょう。
使用の宣言は試合開始前に行う
DH制を使用するかどうかは試合開始前にスターティングメンバー(先発オーダー)を提出する際に宣言します。スターティングラインナップにDHとして選手名を記載することで、その試合でのDH制の使用が確定します。
試合途中で追加は不可、解除は可能
DH制の運用における重要なルールのひとつが試合開始後の追加不可です。
- 試合途中での追加不可:試合開始時にDHを設定しなかった場合、途中からDHを追加することはできない
- 解除は可能:DH制を解除することは試合途中でも認められる。DHが守備に就いた場合・投手がDHの打順に入った場合などに自動的に解除される
- 解除後の復帰不可:一度DH制が解除されると、同じ試合内での再設定は認められない
先発投手は指名打者を兼ねることができる
MLBのルール変更(2020年以降)により、先発投手がDHを兼ねる「大谷ルール(Two-Way Player Rule)」が設けられました。このルールにより、投手として先発しながら打席にも立つことができます。大谷翔平選手の活躍を踏まえて整備されたルールで、二刀流選手の活躍の場を広げることを目的としています。
※「大谷ルール」はMLBの規則です。NPB(日本プロ野球)では適用ルールが異なる場合があります。NPBの最新ルールはNPB公式サイトをご確認ください。
必ず使用する必要はなく、リーグ・大会によって異なる
DH制はリーグや大会によって採用・非採用が分かれます。
| リーグ・大会 | DH制の採用状況 |
|---|---|
| MLB(全リーグ) | 2022年より全チームで採用 |
| NPB パ・リーグ | 1975年より採用 |
| NPB セ・リーグ | 2027年より導入予定(※要確認) |
| NPB 交流戦 | 開催形式によって異なる(※要確認) |
| 高校野球(甲子園) | 非採用(投手も打席に立つ) |
| 国際大会(WBC等) | 大会規則による |
注意:各大会・リーグのDH制採用状況は変更される場合があります。最新情報は各リーグ・大会の公式サイトをご確認ください。
DH制のメリット・デメリット
DH制には攻撃力向上・投手負担軽減などのメリットがある一方、戦略面での変化も生まれます。両面を正しく理解しておきましょう。
メリット
投手の負担軽減
DH制最大のメリットのひとつが投手が打撃練習に時間を割かなくてよくなることです。現代野球では投手の分業化(先発・中継ぎ・抑え)が進んでおり、投手が打撃スキルを磨く必要性が薄れています。DH制により投手はピッチングの練習に専念でき、より高い投球パフォーマンスの維持につながるとされています。
打撃力のある選手を活用可能
DH制では守備能力が低下してもバッティング能力が高い選手を長く現役として活用できます。足腰の衰えなどで守備が難しくなったベテランの強打者も、DHとして打席に立てることでチームの得点力に貢献できます。
選手起用の幅が広がる
DH制によりチームの選手起用パターンが増えます。
- 守備専門・打撃専門の役割分業が明確になる
- リードを保護したい終盤に守備の上手い選手を配置しやすくなる
- 若手の強打者を守備なしでスタメン起用できる機会が生まれる
デメリット
控え選手の出場機会が減る
DH制では打撃専門のDHが固定されやすいため、控え野手の出場機会が限られやすくなる側面があります。DH制なしの場合は投手交代のタイミングで代打・守備固めを使う機会が多く生まれますが、DHがいることで交代の必要性が下がります。
投手交代時の駆け引きが減る
DH制なしの試合では投手の打順が回ってきたタイミングが重要な戦略的判断ポイントになります。「この場面で代打を送るか・投手を続けるか」という駆け引きがDH制では生まれにくくなります。
この「投手の打順をめぐる駆け引き」はDH制なしの試合ならではの戦略的面白さとして、従来のルールを好むファンから評価されています。
チーム間の戦力差が広がる可能性
資金力の高い球団は優秀なDHを確保しやすく、打撃専門の高年俸選手をラインナップに加えることで投打のバランスをより高めやすい側面があります。資金力の差がDH制でさらに戦力差として表れる可能性を指摘する声もあります。
DH制のメリット・デメリットについてはダイヤモンドVのDH制解説記事やトンボデイズのDH制解説でも詳しく紹介されています。
DH制が試合内容に与える影響
DH制の採用は試合の流れ・戦略・観戦の楽しみ方に具体的な変化をもたらします。
攻撃力向上による試合の盛り上がり
DH制により打撃の弱い投手の打順がなくなることで、打線に「弱い打順」が生まれにくくなり得点機会が増加します。MLBでDH制が全リーグに導入された2022年以降、全体的な得点数の変化が注目されました。
- 打力の高い選手を打順に加えることでビッグイニング(大量得点)が生まれやすくなる
- 投手の打順での「アウト確定」場面がなくなり、投手は全打者に集中しなければならなくなる
- 試合の得点が増えることで接戦・逆転劇が生まれやすくなる可能性がある
戦略面での柔軟性が増す
DH制はチームの戦略的な選手起用に新たな選択肢をもたらします。
- 終盤の守備固め・代走などを投手交代と切り離して計画できる
- 調子の良い打者をDHに配置してラインナップに組み込む柔軟性が生まれる
- 先発投手の球数管理と打線の組み替えを独立して考えられる
野球用具やバッティング練習に関する情報はアルペングループの野球用品特集でも詳しく紹介されています。
izawa130.netでは野球のルール解説・投球技術・バッティングコツなどの情報を幅広く発信しています。インフィールドフライやカットボールなどのルール・技術解説もあわせてご覧ください。
まとめ

DHとは投手の負担を減らし、戦略の幅を広げる制度
DH(指名打者)制度は投手に代わって打席に立つ打撃専門選手をラインナップに加えられるルールで、1973年にMLBアメリカンリーグで初採用されました。日本ではパ・リーグが1975年から採用し、セ・リーグも2027年から導入予定とされています。
- DHは守備に就かず打撃のみを担当する専門選手
- 試合開始前に宣言が必要で、途中から追加することはできない
- リーグ・大会によって採用・非採用が分かれる
メリット・デメリットを理解して試合観戦を楽しむ
- メリット:投手の負担軽減・打撃力のある選手の活用・選手起用の幅拡大
- デメリット:控え選手の出場機会減少・投手交代の駆け引き減少・戦力格差の拡大懸念
導入リーグや大会に応じて適用の有無を確認することが重要
DH制はリーグ・大会によって適用が異なるため、試合観戦やプレー参加の際は事前に確認することが重要です。DH制の有無によって戦略・選手起用・試合の流れが変わるため、ルールを理解することで野球の見方がより深まります。
※本記事は野球ルールの情報提供を目的としています。記載のルールはMLB・NPBの規則に基づいていますが、変更される場合があります。最新のルールは各リーグ・大会の公式サイトをご確認ください。

